刑法(強盗予備罪)

強盗予備罪(1) ~「強盗予備罪とは?」「強盗予備罪は、強盗罪に吸収される」「強盗予備罪には、事後強盗罪の予備も含む」を判例で解説~

 これから複数回にわたり強盗予備罪(刑法237条)について解説します。

強盗予備罪とは?

 強盗予備罪とは、

行為者が金品の強奪を企て、金品の強奪の着手を準備する行為

をいいます(名古屋高裁金沢支部判決 昭和30年3月17日)。

 強盗予備罪は、強盗罪(刑法236条)の危険性、反社会性の大きさを考慮して、強盗の予備をも処罰することにより、強盗の実行前にこれを鎮圧しようとするために設けられました。

 同じ予備罪である殺人予備罪(刑法201条)、放火予備罪(刑法113条)と異なり、情状による刑の免除規定がないという特徴があります。

 また、特別刑法の罪として、航空機強取予備罪(航空機強取3条)、政治目的のための強盗の予備・陰謀教唆せん動罪(破壊活動防止法39条)があります。

強盗予備罪の主体(犯人)

 事後強盗罪の主体(犯人)は、

強盗の罪を犯す目的を持つ者

です。

強盗予備罪は、強盗罪に吸収される

 強盗の実行に着手した以上は、その既遂、未遂を問わず、強盗罪は強盗予備罪に吸収されます。

 この点について判示した以下の判例があります。

最高裁判決(昭和24年12月21日)

 この判例で、裁判官は、

  • 強盗の予備をしたものが、その実行に着手した以上、それが未遂に終わると既遂になるとを問わず、その予備行為は、未遂又は既遂の強盗罪に吸収されて独立して処罰の対象となるものではない
  • 本件において、原審は既に強盗殺人未遂罪を認定処断したのであるから、もはや強盗予備行為は処罰の対象として独立して審判さるべきものではないのである

と判示しました。

強盗予備罪には、事後強盗罪の予備も含む

 強盗予備罪の刑法237条の条文に記載される「強盗の罪を犯す目的」に事後強盗の目的を含むかどうかについて、判例は含むと解し、事後強盗の予備罪が成立することを認めています。

最高裁決定(昭和54年11月19日)

 夜間、事務所に入り、誰かに発見されたときには脅して逃げるつもりで登山ナイフと模造拳銃をアタッシュケースに入れて徘徊しているところを警察官に職務質間された事案で、裁判官は、

  • 刑法237条にいう『強盗の目的』には、同法238条に規定する準強盗(現行:事後強盗)を目的とする場合を含むと解すべきである

と判示し、事後強盗の予備罪を成立を認めました。

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