これから複数回にわたり強盗罪(刑法236条)について解説します。
強盗罪とは?
強盗罪は、
人の反抗を抑圧するに足りる暴行又は脅迫を加えて、人の財物を強取し、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人をしてこれを得させる行為を内容とする犯罪
です。
強盗罪の保護法益
強盗罪は、犯罪の手段である暴行・脅迫の点において、人格的法益に対する侵害の面を有し、犯罪の目的または結果の点において財産的法益に対する侵害の面を有しています。
強盗罪は、身体犯と財産犯の両面を有するところ、いずれにしても個人的法益に対する罪の類型に入ると考えるのが通説です。
刑法上の強盗の罪
強盗の罪について、刑法は、
を基本類型として規定しています。
その上で、
といった加重類型を規定しています。
そのほか、
の規定をおいて、強盗罪の予備まで処罰することとしています。
さらに、
といった特別規定を設けています。
特別法上の強盗の罪
特別刑法において、強盗の罪を規定するものとして、
- 盗犯等の防止及処分に関する法律2条の「常習強盗罪」
- 盗犯等の防止及処分に関する法律3条の「常習累犯強盗罪」
- 破壊活動防止法39条の「政治目的のための強盗の予備・陰謀・教唆・せん動罪」
- 航空機の強取等の処罰に関する法律1条の「航空機の強取・運航支配罪」
- 航空機の強取等の処罰に関する法律2条の「航空機の強取・運航支配致死罪」
- 航空機の強取等の処罰に関する法律3条「航空機の強取・運航支配予備罪」
- 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律2条1号の「船舶強取・運行支配罪」
- 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律2条2号の「船舶内の財物強取等罪」
- 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律4条の「船舶強取・運行支配又は船舶内の財物強取致死傷罪」
があります。
強盗罪は、法定合議事件から除外されている
法定合議事件とは、裁判所法26条2項本文に規定があり、
法定刑が短期1年以上の懲役刑に当たる罪については、裁判官1人の単独で審理を行うのではなく、裁判官3人の合議体で審理を行うことが必須となる事件
をいいます。
ここで、強盗罪(刑法236条)、事後強盗罪(刑法238条)、昏酔強盗罪(刑法239条)、常習強盗罪(盗犯2条)、常習累犯強盗罪(盗犯3条)については、短期1年以上の懲役刑であるのに、法定合議事件から除外されいます(裁判所法26条2項2号)。
裁判所法が、強盗罪などについて、合議事件ではなく、単独事件としたのは、これらの罪の件数が比較的多いためと考えられています。
有期懲役に関する限りでは、何を合議事件にするかは立法政策の問題であり、刑の重さは、合議体の審議とは本質的には関係ないと考えられています。