強盗罪における暴行・脅迫の定義
強盗罪(刑法236条)における暴行・脅迫は、
財物を強取する手段としての暴行・脅迫であり、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の行為であることを要する
とされます。
強盗罪における暴行・脅迫は、暴行罪(刑法208条)や脅迫罪(刑法222条)の暴行・脅迫より狭く、その被害の程度の高いものを意味します。
(なお、暴行の一般的概念については、前の記事①参照、脅迫の一般概念については前の記事②参照)
強盗罪を認定するには、同じ暴行・脅迫を手段として財物を奪取する恐喝罪よりも、暴行・脅迫の程度が高い必要があります。
強盗罪の脅迫・暴行は、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の行為が必要とされるので、被害者の反抗を抑圧しない程度の暴行・脅迫であれば、強盗罪は成立せず、恐喝罪が成立するにとどまります。
強盗罪が成立する暴行・脅迫であったか否かは、被害者の主観ではなく、客観的に判断される
強盗罪が成立する暴行・脅迫であったか否かは、被害者の主観ではなく、客観的に判断されます。
この点について判示した以下の判例があります。
この判例で、裁判官は、
- 他人に暴行又は脅迫を加えて財物を奪取した場合には、それが恐喝罪となるか強盗罪となるかは、その暴行又は脅迫が、社会通念上、一般に被害者の反抗を抑圧するに足る程度のものであるかどうかと言う客観的基準によって決せられるのであって、具体的事案の被害者の主観を基準として、その被害者の反抗を抑圧する程度であったかどうかと言うことによって決せられるものではない
と判示しました。
強盗罪における暴行には、傷害や殺人も含まれる
強盗罪における暴行には、傷害や殺人も含まれます。
なので、強盗に伴う暴行で、傷害を負わせ、又は死に至らしめた場合は、強盗致傷罪、強盗致死罪、強盗殺人罪(刑法240条)が成立します。
参考となる判例として、以下のものがあります。
大審院判決(大正11年12月22日)
この判例は、強盗殺人につき、強盗罪(刑法236条)と殺人罪(刑法199条)の観念的競合(刑法54条)を適用し、強盗罪と殺人罪の観念的競合の一罪を認定すべきではなく、強盗殺人罪(刑法240条)のみを適用し、強盗殺人罪を認定すべきとしました。
裁判官は、
と判示しました。
大審院判決(大正3年6月24日)
この判例は、殺人は、強盗罪にいう暴行に含まれるとしました。
裁判官は、
と判示しました。