刑法(強盗致死傷罪)

強盗致死傷罪(10) ~共同正犯③「強盗の共犯者の一人が、殺意はないが、被害者を強盗に伴う暴行で死亡させた場合、共犯者全員に強盗致死罪の共同正犯が成立する」を判例で解説~

強盗の共犯者の一人が、殺意はないが、被害者を強盗に伴う暴行で死亡させた場合、共犯者全員に強盗致死罪の共同正犯が成立する

 複数人が強盗を共謀して実行したところ、共犯者の一人が、殺意はないが、被害者を強盗に伴う暴行で死亡させた場合について説明します。

 暴行により被害者を死に至らしめた共犯者に対しては、結果的加重犯として強盗致死罪(又は強盗傷人罪)が成立します。

 そして、他の共犯者に対しても、強盗致死罪(又は強盗傷人罪)が成立します。

 つまり、この場合、強盗の共犯者全員に、強盗致死罪(又は強盗傷人罪)の共同正犯が成立します。

 結果的加重犯においては、致死という結果が発生した以上、行為者はそれについて認識がなかった場合であっても、結果までの責任を負わされます。

 なので、他の共犯者も強盗致死罪(又は強盗傷人罪)の責任を免れることはできません。

 参考となる判例として、以下のものがあります。

最高裁判決(昭和22年11月5日)

 この判例で、裁判官は、

  • 強盗の共犯者中の一人の施用した財物奪取の手段としての暴行の結果、被害者に傷害を生ぜしめたときは、その共犯者の全員につき、強盗傷人罪は成立するのであって、このことは強盗傷人罪がいわゆる結果犯たるの故にほかならない

と判示し、強盗の共謀がある以上、共犯者全員に強盗傷人罪が成立するとし、その理由として、強盗傷人罪は強盗罪の結果的加重犯だからであるとしました。

札幌高裁判決(昭和28年6月30日)

 この判例は、強盗傷人罪は、強盗の結果的加重犯であって単純一罪であるから、犯人が、強盗目的で暴行を加えた事実を認識しながら、ともに金品を強取しようと決意して、互いに意思を連絡して金品を強取した者は、仮りに共犯者が先になした暴行により生じた傷害について何ら認識がなくても、強盗傷人罪の共同正犯の刑責を負うことになるとしました。

 裁判官は、

  • 刑法第240条前段の罪は、強盗の結果的加重犯であって、単純一罪を構成するものであるから、他人が強盗の目的をもって暴行を加えた事実を認識して、この機会を利用し、ともに金品を強取せんことを決意し、ここに互いに意思連絡の上、金品を強取したものは、たとえ共犯者が先になしたる暴行の結果生じたる傷害につき、なんら認識なかりし場合といえども、その所為に対しては、強盗傷人罪の共同正犯をもって問擬(もんぎ)するのが正当である
  • 被告人は、Aほか1名と飲酒して札幌市ab丁目の電車通を相前後して通行中、Aが金品強取の目的をもって通りかかったBの顔面を殴打し、「金を出せ」と要求しているのを知って、自己もこの機会を利用して金品を強取せんことを企て、直ちにAと協力し、ここにAと意思連絡の上、まずBからB所持の金700円を奪い、更にAがBの左腕を抑え、被告人がBのはめていた腕時計を外してこれを強奪し、その際、Aの暴行によりBの右眼部に治療1週間を要する打撲傷を負わしめた事実を認める
  • しからば、被告人の所為は、冒頭説示の理由により、強盗傷人罪の共同正犯にあたることもちろんである

と判示しました。

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