法律(刑事訴訟法)

捜索・差押え・記録命令付差押えとは?① ~「根拠法令」「捜索許可状・差押許可状・記録命令付差押許可状の発布」「別事件の証拠物の差押えの違法性」「無令状による捜索・差押え」を判例などで解説~

「捜索」「差押え」「記録命令付差押え」とは?

 「捜索」「差押え」「記録命令付差押え」とは、

犯罪を証明する証拠物を収集するための強制手段

です。

 「捜索」とは、

被疑者や証拠物を探して発見するために、人の住居などに立ち入る強制処分

をいいます(刑訴法218条219条222条)。

 「差押え」とは、

証拠物を強制的に取得する処分

をいいます(刑訴法218条219条222条99条) 。

 「記録命令付差押え」とは、

電磁的記録(電子データ)を記録媒体(USBメモリなど)に記録し、または印刷し、または記録媒体ごと差し押さえる強制処分

をいいます(刑訴法99条の2)。

 「記録命令付差押え」は、インターネットに接続されたコンピューター・サーバ内に記録されたデータを差し押さえる場合に活用されます。

 サーバそのものを差し押さえると、サーバの管理者に著しい業務支障や経済的損失を被らせることから、「記録命令付差押え」の規定が設けられています。

「捜索」「差押え」「記録命令付差押え」の根拠法令

 「捜索」「差押え」「記録命令付差押え」は、強制捜査です。

 なので、令状主義の原則にのっとり、その実行には、裁判官の発する令状が必要になります。

 根拠法令は、憲法35条にあり、

『何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、かつ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない』

と規定し、捜索、差押え、記録命令付差押えを行うには、裁判官の発する令状を必要としています。

 さらに、憲法35条に基づき、刑訴法218条1項

『検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。』

という規定が定めらています。

 「捜索」に対して裁判官が発する令状を「捜索許可状」といいます。

 「差押」に対して裁判官が発する令状を「差押許可状」といいます。

 「記録命令付差押え」に対して裁判官が発する令状を「記録命令付差押許可状」といいます。

「捜索許可状」「差押許可状」「記録命令付差押許可状」の発布方法

令状は同一場所、同一機会ごとに複数発布する必要がある

 「捜索許可状」「差押許可状」「記録命令付差押許可状」は、複数の捜索・差押えの実行を1通の令状にして許可することはできません。

 つまり、同一場所、同一機会で行う捜索・差押えごとに、それぞれ令状が発布される必要があります。

 たとえば、被疑者の家の捜索・差押えと、被疑者の勤務先の捜索・差押えを行う場合、

  • 被疑者の家の捜索・差押えの令状1通
  • 被疑者の勤務先の捜索・差押えの令状1通

の合計2通の令状が発布される必要があります。

 これは、憲法35条

『捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ』

と規定されているためです。

 『格別の令状により』とは、

個々の捜索、差押えを行うには、それぞれ個別の令状が必要である

ことを意味します。

 捜索・差押えを行う場所と機会が異なれば、

  • 捜索場所
  • 差押えする物

が記載された格別の令状が必要になります。

捜索と差押えを1通の令状にまとめることは許される

 捜索と差押えの場所・機会が異なる場合は、それぞれの捜索・差押えの実行を1通の令状にまとめることはできません。

 しかし、「捜索➡差押え」が一連の流れになっている場合(捜索・差押えの場所と機会が同じ場合)は、捜索と差押えを1通の令状にまとめることは許されます。

 これは、物の捜索は、物を差し押さえるために行われるので、物の捜索と差押えが切り離せない関係にあるためです。

 捜索の令状(捜索許可状)と差押えの令状(差押許可状)を合わせて1通にした令状を、

捜索差押許可状

と呼びます。

 この点について、最高裁判例(昭和27年3月19日)があり、裁判官は、

  • 本件の令状は、捜索押収状という名義をもって、捜索と押収とを1通に記載してある
  • 憲法35条2項の趣旨は、捜索と押収とについて、各別の許可が記載されていれば足り、これを1通の令状に記載することを妨げないものと解するを相当とする

と判示し、捜索と押収を1通の令状にまとめることができると判断しています。

別事件の証拠物の差押えは違法

 捜索・差押え現場において、捜索差押許可状が発布された事件ではない別事件の証拠物を差押えできるかが問題になります。

 結論として、別事件の証拠物は押収できません。

 別事件の証拠物を押収すると違法になります。

 たとえば、窃盗事件に関して発布された捜索差押許可状をもって被疑者の家に行き、捜索活動をしていたら、別事件の横領罪の証拠物が発見されたとします。

 この別事件の横領罪の証拠物は押収できないことになります。

 この点については、最高裁判例(昭和51年11月18日)があり、裁判官は、

  • 憲法35条1項及びこれを受けた刑訴法218条1項219条1項は、差押は差し押えるべき物を明示した令状によらなければすることができない旨を定めている
  • その趣旨からすると、令状に明示されていない物の差押が禁止されるばかりでなく、捜査機関が専ら別罪の証拠に利用する目的で差押許可状に明示された物を差し押えることも禁止される

と判示し、別事件の証拠物の差押えは違法になると判断しています。

捜索・差押え中に、別事件の証拠物が発見された場合の対応

 もし、捜索・差押え中に、別事件の証拠物が発見された場合、

  1. 捜索・差押えの処分を受ける者から、その別事件の証拠物を任意で提出してもらう
  2. 別事件の証拠物の発見をもって、捜索・差押えの処分を受けるものを現行犯逮捕し(たとえば、別事件の証拠物が覚醒剤であった場合、覚醒剤取締法違反で現行犯逮捕する)、逮捕に伴って認められる無令状での差押えを行う(刑訴法220条1項

という方法によって、別事件の証拠物を差し押さえることが考えられます。

無令状による捜索・差押え

 例外的に、令状なしで捜索・差押えができる場合があります。

 具体的には、

  1. 逮捕の現場における捜索・差押え(刑訴法220条
  2. 勾留状勾引状の執行に伴う捜索(刑訴法126条

の場合です。

 逮捕を行う際には、無令状で「捜索」「差押え」ができます。

 勾留状勾引状の執行を行う際には、無令状で「捜索」ができます。

※ 勾留状勾引状の執行の場合は、無令状による「差押え」はできません。

① 逮捕の現場における捜索・差押・検証について

 逮捕の現場における捜索・差押えは、無令状で行うことができます。

 根拠法令は、刑訴法220条1項にあり、

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第199条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。

第210条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。

1 人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。

2 逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること。

と規定しています。

 平たくいうと、逮捕(現行犯逮捕通常逮捕緊急逮捕)に際しては、逮捕現場における捜索・差押えが捜索許可状、差押許可状なしでできるというわけです。

 逮捕現場においては、捜索・差押えの令状の発布を待っていたのでは、犯人や犯罪の証拠を取り逃してしまうため、無令状での捜索・差押えが認められているのです。

 条文中の『必要があるとき』について、必要性の判断は捜査機関の裁量によるとされますが、判断基準として、

客観的に必要性が認められる

ことが必要になります。

 この点については、札幌高裁函館支部判例(昭和37年9月11日)があり、裁判官は、

  • 捜査機関は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、令状なくして人の住居に入り被疑者の捜索をすることができるのであるが、刑訴法220条において「必要があるとき」とは、たんに捜査機関がその主観において必要があると判断するのみでは足らず、客観的にもその必要性が認められる場合であることを要する

と判示しています。

逮捕に伴う捜索・差押えが無令状でできる理由

 逮捕に伴う捜索・差押えが無令状でできる理由は、東京高裁判例(昭和44年6月20日)で示されており、裁判官は、

  • 刑訴法220条1項第2号が、被疑者を逮捕する場合、その現場でなら、令状によらないで、捜索差押をすることができるとしているのは、逮捕の場所には、被疑事実と関連する証拠物が存在する蓋然性が極めて強く、その捜索差押が適法な逮捕に随伴するものである限り、捜索押収令状が発付される要件をほんど充足しているばかりでなく、逮捕者らの身体の安全を図り、証拠の散逸や破壊を防ぐ急速の必要があるからである

と判示しています。

逮捕に伴う無令状での捜索・差押えの逮捕前の実行

 逮捕に伴う無令状による捜索・差押えの実行は、逮捕後のほか、逮捕前でもできるとされます。

 この点については、最高裁判例(昭和36年6月7日)があり、裁判官は、

  • 刑訴法220条1項の「逮捕する場合において」と「逮捕の現場で」の意義であるが、「逮捕する場合において」とは、単なる時点よりも幅のある逮捕する際をいうのである
  • 「逮捕の現場で」とは、場所的同一性を意味するにとどまるものと解するを相当とする
  • なお、「逮捕する場合において」の場合は、逮捕との時間的接着を必要とするけれども、逮捕着手時の前後関係は、これを問わないものと解すべきである
  • 例えば、緊急逮捕のため被疑者方に赴いたところ、被疑者がたまたま他出不在であっても、帰宅次第緊急逮捕する態勢の下に捜索、差押がなされ、かつ、これと時間的に接着して逮捕がなされる限り、その捜索、差押は、なお、緊急逮捕する場合その現場でなされたとするのを妨げるものではない

 と判示しています。

逮捕に伴う無令状による捜索・差押えの逮捕現場の範囲

 逮捕に伴う無令状による捜索・差押えは、『逮捕現場』に限って行うことができます。

 『逮捕現場』とは、被疑者を逮捕した場所のほか、被疑者を追跡した場所や逮捕現場に直接接続する範囲を含むとされます。

被疑者を最寄りの警察署に連れて行ってから捜索押収できるか?

 逮捕した被疑者を最寄りの警察に連れて行ってから、逮捕に伴う捜索・差押えとして、無令状で被疑者の身体を捜索し、所持品の押収ができるかについては、判例で答えが示されています。

東京高裁判例(昭和53年11月15日)

 この判例において、裁判官は、

  • 逮捕現場が群集に取り囲まれていて同所で逮捕者について着衣や所持品等を捜索押収することが、混乱を防止し、被疑者の名誉を保護するうえで適当ではないと認められる場合、当該現場から自動車で数分、距離約数百メートル程度離れた警察署等適当な場所で押収手続をとることは刑訴法220条1項2号にいう逮捕の現場で差押する場合に当ると解すべきである

と判示し、逮捕した被疑者を最寄りの警察署に連れて行ってから、被疑者の身体を捜索し、所持品などを押収することを適法と判断しています。

 とはいえ、この判例では、

逮捕現場における捜索押収が適当ではない場合

という条件つきで、最寄りの警察に被疑者を連れて行ってからの捜索押収を適法と判断しています。

 なので、逮捕現場における捜索押収が適当ではない、または困難であるという条件がない限りは、逮捕現場で捜索押収をしなければ違法になると考えられます。

別事件の証拠物の差押えはできるか?

 逮捕に伴う無令状による捜索・差押えにおいて、逮捕した犯罪事実に関係のない別事件の証拠品を押収できるかが問題になります。

 結論として、別事件の証拠品は押収できません。

 この点については、東京高裁判例(昭和46年3月8日)があり、裁判官は、

  • 被告人は、道路交通法違反の現行犯として逮捕されたものであり、刑事訴訟法第220第1項第2号で逮捕に付随して令状なしに捜索し、差し押えることのできるものは右犯罪の証拠物等に限られる
  • 付随的な強制処分として全く別個の犯罪である銃砲刀剣類所持等取締法違反の証拠物の捜索、差押をすることは許されない

と判示し、逮捕した犯罪に関係のない別事件の証拠品を差し押さえることはできないと判断しています。

 もし、別事件の証拠品が発見され、これを押収しようとした場合は、

  1. 逮捕した被疑者から、その別事件の証拠物を任意で提出してもらう
  2. 別事件の証拠物の発見をもって、その別事件の犯罪事実で、その場において、被疑者を現行犯逮捕し(たとえば、別事件の証拠物が覚醒剤であった場合、覚醒剤取締法違反で現行犯逮捕する)、逮捕に伴う無令状での差押えを行う(刑訴法220条1項

という方法によって、別事件の証拠物を差し押さえることが考えられます。

② 勾留状、勾引状の執行に伴う捜索について

 勾留状、勾引状の執行に伴う捜索・差押えは、無令状で行うことができます。

 根拠法令は、刑訴法126条にあり、

検察事務官又は司法警察職員は、勾引状又は勾留状を執行する場合において必要があるときは、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り、被告人の捜索をすることができる。この場合には、捜索状は、これを必要としない。

と規定しています。

 勾留状、勾引状の執行を実現するためには、執行対象となる人物がいる家などに立ち入る必要があるので、無令状での捜索が認められているのです。

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