刑法(親族相盗例)

親族相盗例(8) ~「刑の免除とは?」を説明

 前回の記事の続きです。

刑の免除とは?

 親族間の犯罪に関する特例(親族相盗例)は、刑法244条に規定があり、

1項 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する

2項 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない

3項 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない

と規定されます。

 親族相盗例(刑法244条)の1項に関し、配偶者、直系血族又は同居の親族の間において窃盗罪(刑法235条)、不動産侵奪罪(刑法235条の2)又はこれらの罪の未遂罪を犯した者については、その刑が免除されます(刑法244条1項)。

 刑が免除されるとは、

公訴の提起されても(検察官が事件を起訴しても)、刑を免除する旨の有罪判決が言い渡される

ことを意味します(刑訴334条)。

 刑が免除されると、有罪であるとはされるものの、刑罰を受けなくてよい(刑務所に服役したり、罰金を納めるたりしなくてよい)ということになります。

 なお、実際の裁判では、検察官が刑の免除の裁判を求めて事件を起訴することはなく、検察官において、事件を不起訴処分にするというのが通常です。

刑が免除される理由

 刑が免除される理由について、判例・通説は、

親族相盗行為であっても、構成要件に該当し、違法かつ有責な行為であり、犯罪は成立するが、親族という身分があることゆえに刑罰が阻却される

と解しています。

 この点に関する以下の判例があります。

最高裁判決(昭和24年11月26日)

 裁判所は、

  • 窃盗犯人が盗難被害者の直系卑属であることは免責の事由になるだけであって少しも窃盗罪の成立を妨げるものではないから、親族相盗の場合でも賍物たるの情を知ってとれを買受ければ故買罪(現行法:盗品等有償譲受け罪)が成立する

と判示しました。

最高裁判決(昭和25年12月12日)

 裁判所は、

  • 刑法244条は、同条所定の者の間において行われた窃盗罪及びその未遂罪に関しその犯人の処罰につき特例を設けたに過ぎないのであって、その犯罪の成立を否定したものではないから、右窃盗罪によって奪取された物は賍物たる性質を失わない

と判示しました。

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