前回の記事の続きです。
親族関係のある窃盗犯人には親族相盗例が適用されるが、親族関係のない共犯者には親族相盗例は適用されない
親族関係のある窃盗犯人には親族相盗例が適用されるが、親族関係のない共犯者には親族相盗例は適用されないとした以下の裁判例があります。
広島高裁岡山支部判決(昭和28年3月12日)
裁判所は、
- 原判決を検討するに、原審は事実理由第三において、「被告人Kは、相被告人Yと共謀の上、昭和28年5月28日頃、富山県〇〇番地H方土蔵において、H所有の粳精米8斗を窃取したものである。」旨の事実を認定し、該事実に刑法第235条、第60条等を適用し、これに累犯の加重をした上、他の認定事実との関係において、併合の加重をなした刑期範囲内において、被告人Kを懲役1年に処したものであることを認め得る
- しかるに、原審証拠調の結果を検討すれば、前敍の被害者Hは、被告人Kの実父であることが明白であるから、従って被告人Kの前記所為は、刑法第244条第1項前段にいわゆる「直系血族(中略)の間において、第235条の罪(中略)
を犯したるもの」に該当すると言わなければならない
- しかも証拠によれば、共犯者Yは、被害者と何らの親族関係なく、かつ、同条第2項は「親族に非る共犯については、前項の例を用いず。」と規定しているけれども、その趣旨とするところは、右Yの如き親族でない者が、共犯者てある場合、かかる共犯者、すなわち、親族でない者については、前項の例によらないと言うに止まり、親族でない者が共犯者中に存在する場合、親族である其の共犯者についても、親族でない共犯者と等しく、前項の例によらず、これを処罰すると言う趣旨では決してない
- そうして見れば親族でない者と共謀の上、自己の直系血族との間において、窃盗の罪を犯した被告人Kの所為については、すべからく刑法第244条第1項前段を適用し、被告人Kに対しその刑を免除すべきであったにもかかわらず、原審はかかる措置に出ることなく、却って敍上の事実をもって、被告人Kに対する科刑の基礎としたものであり、原判決は親族関係を誤認したものでなければ、法令の解釈適用を誤ったものであって、右の誤りは判決に影響するから、論旨は理由があり、原判決は破棄を
免れない
と判示し、被告人と親族関係のある被告人Kに親族相盗例を適用しなかったのは違法であるとしました。