前回に引き続き、横領罪(刑法252条)と他罪との関係について説明します。
今回は、横領罪と
- 文書偽造罪
との関係について説明します。
文書偽造罪との関係
文書偽造罪と横領罪の関係について判示した判例として、以下のものがあります。
大審院判決(明治42年8月31日)
この判例は、
としました。
大審院判決(大正11年9月19日)
この判例は、
としました。
大審院判決(大正4年11月29日)
この判例は、
- 委託されていた白紙売渡証等を横領し、これを材料として文書を偽造した場合、証書類の横領は、文書偽造の通常の手段ではなく、また、文書偽造は横領の当然の結果でもないから、横領罪と文書偽造罪とは牽連犯ではなく併合罪とすべきである
としました。
大審院判決(昭和7年3月22日)、大審院判決(大正11年9月19日)
この判例は、
としました。
大審院判決(昭和7年4月11日)
この判例は、
- 他人所有の株券を占有する者が、自己の債務の担保に供するため、その株券の名義書換えについて、委託者の委任状及び株式処分承諾書を偽造し、その文書と共に株券を担保として債権者に交付したときは、偽造の段階から株券の不法領得の意思を発現したものであって、株券の横領と両文書の偽造行使とは観念的競合となる
としました。
東京高裁判決(昭和29年3月29日)
この判例は、
- 売買により不動産の所有権が買主に移転した後、移転登記が未了であることを奇貨とし、売主が債務の担保としてその不動産に抵当権を設定して登記をした場合、その抵当権設定登記が有効であれば、横領罪のほかに公正証書原本不実記載罪を構成するものではない
としました。
この判例は、
- 虚偽の抵当権仮登記により不動産を横領した場合には、登記記録上に虚偽の仮登記の記録をさせて閲覧できる状態にしたことが電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪に当たり、横領罪と不実記録電磁的公正証書原本供用罪とは観念的競合の関係に立つ
としました。
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