法律(刑法)

詐欺罪㉝ ~「電気計量器(電気メーター)の指針逆転に関する詐欺」を判例で解説~

電気計量器の指針逆転に関する詐欺

 詐欺罪(刑法246条)について、電気計量器(電気メーター)の指針逆転に関する詐欺の判例を紹介します。

大審院判決(昭和9年3月29日)

 電気計量器の指針を逆回転させて、これを検針員に示して、電気料金の支払を免れる行為について、詐欺罪の成立を認めました。

 裁判官は、

  • 電気計量器に、その指針を逆回転せしむる器具を取り付けたる行為は、電気事業法第34条にいわゆる電気工作物の施設を変更したる罪にして、同法第33条にいわゆる電気の供給又は使用を妨害したる罪にあらず
  • 前項の場合において、計量器の指針を逆回転せしめたるの情を秘し、これを検針員に示し、電気料金の支払を免れたる行為は、詐欺罪にして電気窃盗罪にあらず

と判示しました。

福岡地裁判決(昭和61年3月3日)

 業務用電力量計に工作して、実際の使用電力より少ない量を指示させた行為を偽計業務妨害罪に問擬(もんぎ)しました。

 裁判官は、

  • 被告人は、甲、乙と共謀のうえ、K電力株式会社(以下、K電力という。)から、電気の供給を受けている福岡県〇〇市大字〇〇番地パチンコ〇〇こと右乙方店舗内に、K電力が電気の使用量を計量するため設置している電気計量の作動を減速させ、K電力の右乙に対する正当な電気料金の計算徴収業務を妨害しようと企て、昭和60年3月中旬頃、右乙方店舗において、同所に設置されていたK電力の電気計量を収納している計器ボックスを開け、その内部の電気計量とテストスイッチ間に配線してある3Lの記号表示への通電を妨げ、その作動を減速させて実際の使用電力量より少ない電力量を指示するような工夫をなし、もって偽計を用いてK電力の右乙に対する正当な電気料金の計算徴収業務を妨害したものである

と判示しました。

 上記のように、工作して少ない電力使用の指針を検針員に示して電気料金の支払を免れた場合、詐欺罪も構成するものと考えられます。

福岡地裁判決(昭和61年3月24日)

 この判例も、上記判例と同じく、業務用電力量計に工作して、実際の使用電力より少ない量を指示させた行為を偽計業務妨害罪に問擬しました。

 裁判官は、

  • 被告人両名は、Nと共謀のうえ、K電力株式会社(以下K電力という。)から、電気の供給を受けている福岡市〇〇区〇号パチンコ店〇〇ことA方店舗内に、K電力が電気の使用量を計量するため設置している電気計量の作動を減速させ、K電力の右Aに対する正当な電気料金の計算徴収業務を妨害しようと企て、昭和59年11月中旬頃、右A方店舗において、同所に設置されていたK電力の電気計量を収納している計器ボックスを開け、電気計量内の計器円盤の軸を支えている軸受筒の中に、長さ1.5センチメートルのゴム様異物を挿入して、円板軸との接触抵抗を増加させ、円板の回転速度を減速させて実際の使用電力量より少ない電力量を指示するような工夫をなし、もって偽計を用いてK電力の右Aに対する正当な電気料金の計算徴収業務を妨害したものである

と判示しました。

 この場合も、工作して少ない電力使用の指針を検針員に示して電気料金の支払を免れたとして、詐欺罪も構成すると考えられます。

 偽計業務妨害の判例ですが、類似の判例として、以下の判例を参考に紹介します。

最高裁決定(昭和59年4月27日)

 受信側の電話回線に取り付けることにより、発信側加入電話の通話料金の度数計の作動を不能にする「マジックホン」と称する電気機器を取り付けて通話料金を免れた事案につき、有線電気通信法21条違反及び偽計業務妨害の両罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • A公社の架設する電話回線において、発信側電話機に対する課金装置を作動させるため受信側から発信側に送出される応答信号は、有線電気通信法2条1項にいう「符号」にあたり、応答信号の送出を阻害する機能を有するマジックホンと称する電気機器を加入電話回線に取り付け使用して、応答信号の送出を妨害するとともに、発信側電話機に対する課金装置の作動を不能にした行為が、有線電気通信妨害罪(同法21条)及び偽計業務妨害罪にあたる

と判示しました。

最高裁判決(昭和61年6月24日)

 上記判例と同様に、受信側の電話回線に取り付けることにより、発信側加入電話の通話料金の度数計の作動を不能にする「マジックホン」と称する電気機器を取り付けて通話料金を免れた事案につき、有線電気通信法21条違反及び偽計業務妨害の両罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 被告人がマジックホンと称する電気機器1台を加入電話の回線に取り付けた本件行為につき、たとえ被告人がただ一回通話を試みただけで同機器を取り外した等の事情があったにせよ、それ故に、行為の違法性が否定されるものではないとして、有線電気通信妨害罪、偽計業務妨害罪の成立を認めた原判決の判断は、相当として是認できる
  • マジックホンは、要するに、「電話料金がただになる機械」であり、このような機器を電話回路に取り付けることが許されないことは、国民一般にとって容易に認識しうるところである
  • しかも、有線電気通信妨害罪及び偽計業務妨害罪は、有線電気通信または業務に対する妨害の結果を発生させるおそれのある行為がなされることによって成立する

と判示しました。