刑法(詐欺罪)

詐欺罪㉞ ~「集金に関する詐欺」を判例で解説~

集金に関する詐欺

 詐欺罪(刑法246条)について、集金に関する詐欺の判例を紹介します。

東京高裁判決(昭和28年6月12日)

 無尽会社外務員として無尽掛金の集金の権限を持っていた者が、集金を自己の用途に費消する意図で、無尽掛金を領収したとしても、詐欺罪ではなく、業務上横領罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 被告人は、無尽会社の外務員として無尽契約の募集及び掛金の集金の業務に従事していたものであるから、無尽掛金集金の権限をもっていたものである
  • 従って、被告人がその集金を自己の用途に費消するつもりであって、会社に入金するつもりがないのにもかかわらず、これを秘して、Cから無尽掛金を受領したとしても、集金は正当権限に基く無尽掛金の集金行為であり、または正当権限を有する被告人に無尽掛金として交付したCの支払行為は、即時かつ当然に右会社に対して有効な掛金の支払となるものである
  • 被告人に集金の際、受領金の使途について不法の意図があったとしても、単に動機の不法に過ぎないもので、集金行為を違法ならしめるものではない
  • 従って、被告人が集金行為後に金員をほしいままに自己の用途に費消あるいはその目的のために着服したときは、業務上横領罪が成立するは格別、集金行為が詐欺罪にあたるものということはできない

と判示しました。

東京高裁判決(昭和29年4月27日)

 この判例は、上記判例とは逆に、横領罪は成立せず、詐欺罪が成立するとしました。

 税務署係員が、納税者から集金した金を自分のものにした事案で、税務署の係員が納税者を欺罔し、税金名義で金員の交付を受けた場合は、たとえそれにより納税者が納税の義務を免れ、係員は交付を受けると同時に税務きのために保管する関係にあるとしても、横領罪は成立せず、詐欺罪が成立するとしました。

 まず、被告人の弁護人は、

  • 被告人が交付を受けた金員は、その交付者たる納税者において交付すると同時に、M税務署に対する納税を完了したものであると共に、その金員は、税金として、M税務署の所有に属し、被告人は、その交付を受くると同時にこれが金員の保管を始めたものであって、被告人はその保管にかかる金員を自己の用途に費消したものであるから、横領の罪の成立するは格別、詐欺の罪の成立する余地はない

と主張しました。

 この主張に対し、裁判官は、

  • 不法に領得する意思をもって、欺罔手段を尽くして人を錯誤に至らしめ、これが錯誤に基づき財物を交付せしめた事実あるにおいては、直ちに詐欺罪は成立し、その際、たまたま、その財物が、その交付を受くると同時に、他人の所有に帰属し、その交付者において一定の債務を免かるべき法律関係にあると共に、犯人においてその交付を受けたるにおいては、本来の職務としては、その他人たる本人のため、これを保管占有すべき関係にあり、従って、同犯人において、ほしいままにこれを自己の用途に費消するときは、右交付を受けたる後の法律関係としては、あたかも横領の罪の形態を備わうるが如きものがあるとすると、これは、右すでに成立した詐欺の罪によって取得した財物の単なる事後処分にすぎず、これが事後における処分につき、更に横領の罪の成立なきはもちろん、財物の交付を受けたると同時以後における法律関係が、右の如くなるの故をもって、すでに成立した詐欺の罪の成立に何ら消長のある限りではない
  • 果たして然らば、所論(弁護人の主張)は要するに、すでに成立した詐欺罪によって取得した財物の単なる事後の処分に該当する事実を捉えて、原判決を非難するものであって、右説示するところに照らし、所論いうが如き事由あるにより、被告人の所為につき、横領罪の成立する余地はない

と判示しました。

千葉地裁判決(昭和58年11月11日)

 建設会社の営業担当社員として得意先の集金業務にも従事していた被告人が、集金手続に関する会社の内規に従わず、集金に当たって、あらかじめ社長の決裁を受けず、かつ、所定の手続方式に従わないで顧客から集金を行った事案で、裁判官は、

  • 当該集金につき権限がないのに集金する場合や、集金権限は一応与えられていても、集金に際し、社内において所定の手続を経ることが必要とされているのにこれを経ないで行う場合などにおいては、正当な集金行為とは異なる不法領得意思に基づく行為であることを外部的に覚知しうるものであるから、このような場合には集金行為自体を騙取行為とする詐欺罪の成立を認めるのが相当である

と判示しました。

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