刑法(強盗罪)

強盗罪(25) ~罪数①「強盗罪の罪数の決定基準」「強盗罪の罪数に関する判例」を判例で解説~

強盗罪の罪数の決定基準

 強盗罪の保護法益は、財産的利益と身体的利益である関係から、罪数の決定基準は、この両者が基準となります。

 具体的には、判例を見て理解するとよいです。

強盗罪の罪数に関する判例

同一場所で一度に行われた強盗罪は、数人に対し暴行が加えられ、数人の所有品が奪われた場合でも、1個の強盗罪が成立する

 同一場所で一度に行われた強盗罪について、数人に対し暴行が加えられ、数人の所有品が奪われた場合でも、1個の強盗罪が成立します。

 参考となる判例として、以下のものがあります。

最高裁判決(昭和23年10月26日)

 この判例で、裁判官は、

  • 同一場所で一度に行われた盗罪については、たとえ数人に対し暴行が加えられ、数人の所有品が奪われた場合でも、単純一罪をもって論ずべきものである

と判示し、暴行を加えた被害者が複数名であり、財物を奪われた被害者の複数名でも、同一場所で一度に行われた強盗については、1個の強盗罪が成立するとしました。

福岡高裁宮崎支部判決(昭和25年10月16日)

 この判例で、裁判官は、

  • 一個の暴行・脅迫によって、数人の被害者の共有物を強取し、あるいは、1人の占有する数人の所有者の財物を同時に強取するときも単純一罪と評価される

と判示し、複数の被害者から財物を強取しても、強盗行為(暴行・脅迫)が1個であれば、1個の強盗罪が成立するとしました。

大阪地裁判決(昭和57年10月20日)

 この判例で、裁判官は、

  • 同一機会に数名に対して金品強取の目的で暴行脅迫を加え、うち1名に傷害を負わせ、数名からそれぞれの所持金品を強取した場合にも、強盗致傷罪一個が成立するにとどまる

と判示しました。

複数の被害者に対して成立した1個の強盗罪は観念的競合となる

 上記判例のように、同一場所で一度に行われた強盗罪について、数人に対し暴行が加えられ、数人の所有品が奪われた場合は、1個の強盗罪が成立します。

 そして、その1個の強盗罪は、観念的競合になります。

 この点を明示したのが、以下の判例です。

最高裁判決(昭和22年11月29日)

 この判例は、一個の暴行・脅迫によって、数人から財物を強取した場合、強盗罪の観念的競合が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 被告人は、Aと共謀の上、D方ほか1か所で2度とも同じようにそこで賭博をしていた3人のものに対し、Aが匕首をつき付けておどし、そこにいた人達を怖れさせて、その人々の所持金を奪ったというので、一個の強迫行為をして、数人の者からその所持金を奪ったというのであるから、これは刑法第54条第1項前段にいう「1個の行為にして数個の罪名に触れ」にあたる

と判示しました。

数人に対し暴行が加えられたが、財物を奪取されたものが1人である場合は、1個の強盗罪が成立する

 数人に対し暴行が加えられたが、財物を奪取されたものが1人である場合は、1個の強盗罪が成立します。

 この点ついては判示した以下の判例があります。

東京高裁判決(昭和32年8月26日)

 この判例で、裁判官は、

  • 暴行・脅迫を加えた相手が数人でも、財物を奪取されたものが1人であるなら、単純に強盗一罪が成立するにすぎない

と判示しました。

強盗致傷罪については、強盗に伴う傷害行為で、傷害を負った被害者が複数いる場合には、傷害を負った被害者数と同じ数の強盗致傷罪が成立する

 強盗致傷罪については、強盗に伴う傷害行為で、傷害を負った被害者が複数いる場合には、傷害を負った被害者数と同じ数の強盗致傷罪が成立し、その成立した数個の強盗致傷罪罪は、併合罪の関係になります。

 この考え方は、傷害罪の罪数の考え方と同じです。

 傷害罪の場合、同一の機会における数人に対する傷害は、傷害を負った被害者の人数と同じ数の傷害罪が成立し、その成立した数個の傷害罪は併合罪となります(大審院判決 明治43年5月17日)(詳細は前の記事参照)。

 強盗罪においても、強盗に伴う暴行により、被害者を侵害した身体的保護法益が傷害にまで至るような場合には、被害者ごとに強盗致傷罪が成立すると考えることになります。

 参考となる判例として、以下の判例があります。

最高裁判決(昭和26年8月9日)

 この判例で、裁判官は、

  • 一個の強盗行為の手段として、2名に対し、それぞれ暴行を加えて傷害を与えた場合には、それぞれ強盗傷人罪(強盗致傷罪)が成立し、併合罪となる

旨判示しました。

強盗致傷罪と強盗罪の両罪が成立して併合罪になるとした判例

 被害者の人数と同数の強盗致傷罪と強盗罪が成立し、各罪は併合罪になるとした判例があるので、参考に紹介します。

東京高裁判決(平成2年12月12日)

 被害者4名がそれぞれ所持する金品を強取しようとして、被害者4名に対し、個々に暴行、脅迫を加えて反抗を抑圧した上、そのうち3名の被害者から各人の所持する金品をそれぞれ強取し、その際、その暴行により被害者2名に対し、それぞれ傷害を負わせたという事案で、裁判官は、

  • 傷害を負った被害者2名については、各人ごとに強盗致傷罪が成立し、金品を奪取されたに止まる被害者2名については、各人ごとに強盗罪が成立し、以上は刑法45条前段併合罪として処断すべきである

と判示しました。

強盗罪の罪数の記事一覧

強盗罪(25) ~罪数①「強盗罪の罪数の決定基準」「強盗罪の罪数に関する判例」を判例で解説~

強盗罪(26) ~罪数②「窃盗と強盗が同時に行われた場合、包括一罪として強盗罪のみが成立する」を判例で解説~

強盗罪(27) ~罪数③「1個の強盗行為によって、1項強盗と2項強盗が行われた場合は、強盗罪の一罪が成立する」を判例で解説~