刑法(親族相盗例)

親族相盗例(11) ~「『前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない』とは?」を説明

 前回の記事の続きです。

「前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない」とは?

 親族間の犯罪に関する特例(親族相盗例)は、刑法244条に規定があり、

1項 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する

2項 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない

3項 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない

と規定されます。

 この記事では、3項の「前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない」について説明します。

3項の規定の趣旨

 3項の規定により、親族でない共犯者については、親族相盗例の規定は適用されません。

 親族関係のない共犯者に親族相盗例の規定の適用がないことは当然のことであり、3項は注意的規定と理解されています。

 この点を判示した以下の判例があります。

大審院判決(大正5年12月14日)

 裁判所は、

  • 刑法第244条第1項は、同条所定の親族又は家族の間に行われたる窃盗の罪及びその未遂罪について特例を規定したるものにして、親族又は家族に非ざる共犯についてその適用なきこともとより明文を待たず
  • 同条第2項は、単た注意規定たる過ぎざるものとす

と判示しました。

共犯には、共同正犯、教唆犯、幇助犯の全てを含む

 3項における共犯には、

のすべてを含みます。

 したがって、

  • 人を教唆して親族相盗をさせた場合(窃盗教唆罪)
  • 親族相盗を幇助した場合(窃盗幇助罪)

は、窃盗の教唆者又は幇助者に対し、親族相盗例は適用されず、通常どおり、窃盗教唆罪又は窃盗幇助罪の罪が科せられます。

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