法律(刑事訴訟法)

通常逮捕とは?③ ~「逮捕後の手続」「引致」「仮留置」「弁解録取手続」「勾留請求」を刑事訴訟法などで解説~

逮捕後の手続

 被疑者を逮捕した後の手続は、「①司法巡査」、「②司法警察員」、「③検察事務官」、「④検察官」のどの職にある者が逮捕したかで手続内容が変わります。

 ① 司法巡査が逮捕したとき

 ② 司法警察員が逮捕したとき

 ③ 検察事務官が逮捕したとき

 ④ 検察官が逮捕したとき

の①~④パターンで手続内容を解説します。 

① 司法巡査が逮捕したとき

 警察官(司法警察職員)は、階級の上下で、司法警察員と司法巡査に分けられます。

 司法巡査は、下位の階級に位置し、逮捕した被疑者の勾留を続けるか、それとも釈放するかを判断する権限がありません。

 そのため、司法巡査が被疑者を逮捕した場合は、上位の階級に位置し、被疑者の勾留を続けるか、釈放するかを判断する権限を有する司法警察員に被疑者を引き渡さなければなりません。

 この引き渡しを「引致(いんち)」と呼びます(刑訴法202条)。

 司法巡査は、被疑者を引致した後、逮捕手続書を作成します(犯罪捜査規範136条)。

引致が遅れると違法になる

 刑訴法202条の規定により、被疑者を逮捕したら、逮捕状に記載されている警察署などの施設(引致場所)に被疑者を直ちに強制連行した上、司法警察員に引致しなければなりません。

 引致は、直ちに行う必要がある点がポイントです。

 引致が不当に遅れた場合は、違法と判断されます。

 被疑者の勾留を続けるか、釈放するかを判断する権限を有する司法警察員に対し、被疑者を直ちに引き渡すことで、事案によっては、司法警察員に被疑者を釈放する判断を速やかにしてもらえる可能性があります。

 もし、引致が遅くなれば、それだけ釈放が遅くなり、人権侵害が大きくなります。

 さらに、被疑者は引致されると、司法警察員から、

弁護人選任権(いつでも弁護人を選任できる権利)を告知され、

弁解録取手続という弁解の機会(被疑者の言い分を聞く機会)を与えられる

のに、引致が遅れることで、弁護人選任権の告知や弁解の機会が速やかに与えられないという事態も発生します。

引致の途中に仮の留置施設に被疑者を留置できる(仮留置)

 被疑者を逮捕状記載の引致場所に引致する途中で、必要があれば、仮の措置として、最寄りの警察署などの刑事施設に被疑者を留置することができます(刑訴法74条209条)。

 この措置を

仮留置(かりりゅうち)

といいます。

 たとえば、引致場所となっている警察署が遠方であるため、いったん被疑者を最寄りの警察署に留置して休憩させる必要があるといった場合に、仮留置をすることが考えられます。

司法警察員が司法巡査から被疑者の引致を受けたとき

 司法警察員は、司法巡査から被疑者の引致を受けると、被疑者に対し、

  • 犯罪事実の要旨の告知
  • 弁護人選任権(いつでも弁護人を選任できる権利)の告知
  • 弁解の機会を与える(弁解録取手続)

ことをしなければなりません(刑訴法203条1項憲法34条)。

弁護人選任権の告知について

 弁護人選任権を告知するにあたり、司法警察員は、

  • 弁護士、弁護士法人、弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができること
  • その申出先

を被疑者に教えなければなりません(刑訴法203条3項)。

 さらに、お金がなく(手持ち資金50万円未満)、弁護人を選任することができない場合は、

  • 裁判官に対し、国の費用で弁護人をつけてもらえるように申し出ることができること(国選弁護人選任の申出)

を被疑者に教えなければなりません(刑訴法203条4項)。

弁解の機会(弁解録取手続)について

 弁解録取手続は、逮捕事実に対する被疑者の言い分を確認し、被疑者の留置を続けるか、それとも釈放するかを判断するために行います。

弁解録取手続のあとの送致手続

 司法警察員は、被疑者の弁解録取手続まで終わったら、被疑者の留置を続けるか、それとも釈放するかを判断します。

 釈放すると判断したら、司法警察員は、被疑者を釈放し、強制捜査から任意捜査に切り替えます。

 釈放された被疑者は、「それで終わり」ではなく、今後、捜査機関からの出頭要請があれば、その要請に応じ、取調べなどに任意に応じていかなければなりません。

 反対に、被疑者の留置を続ける必要があると判断すれば、司法警察職員は、被疑者と捜査書類・証拠物を検察官に送る(送致する)手続をとることになります(刑訴法203条1項)。

 この送致の手続は、被疑者が身体を拘束されたときから48時間以内に行わなければなりません。

検察官が司法警察員が被疑者の送致を受けたときの手続

 検察官は、司法警察員から被疑者の送致を受けたら、被疑者に対し、

  • 犯罪事実の要旨の告知
  • 弁護人選任権(いつでも弁護人を選任できる権利)の告知
  • 弁解の機会を与える(弁解録取手続)

ことをしなければなりません(刑訴法205条1項憲法34条)。

 この点については、司法警察員の弁解録取手続と同じです。

※ 弁解録取手続は、司法警察員と検察官の合計2回行われることになります。

 検察官は、弁解録取手続の結果、被疑者を留置する必要がないと判断すれば、被疑者を釈放します。

 反対に、被疑者の留置を継続する必要があると判断すれば、裁判官に被疑者の勾留を請求することになります(刑訴法205条1項)。

 この請求を

勾留請求

といいます。

検察官が司法警察員から送致を受けたあとの勾留請求

 勾留請求には、時間制限があり、検察官が司法警察員から、被疑者の送致を受け、勾留請求をする判断をした場合、送致を受けてから24時間以内に、裁判官に勾留請求を行わなければなりません(刑訴法205条1項)。

 裁判官は、被疑者を勾留する必要があると判断すれば、勾留状という令状を発布します。

 勾留状が発布されると、被疑者は、10日間、警察署の留置施設に勾留されます。

 さらに必要があれば、勾留期間は10日延長され、被疑者は、最大で20日間、警察署の留置施設に勾留されることになります(刑訴法208条)。

 さらに、被疑者は勾留されたまま事件を起訴されることになると、裁判が終わるまでの間、釈放や保釈をされない限り、ずっと警察署や刑務所の留置施設で身体を拘束され続けることになります(刑訴法60条2項)。

逮捕した被疑者が少年で、逮捕罪名が罰金以下の罪であった場合の送致手続

 逮捕した被疑者が少年(19歳以下)で、逮捕罪名が罰金以下の罪であった場合は、検察官に送致はせず、家庭裁判所に送致しなければなりません。

 これは、少年法41条に、

『司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない』

と規定されているためです。

 この場合に、家庭裁判所ではなく、検察官に送致してしまうと違法行為になります。

 なお、罰金以下の罪名の少年事件でも、告訴告発自首が行われている事件については、刑訴法242条245条の規定により、家庭裁判所ではなく、検察庁に事件を送ることになります。

② 司法警察員が逮捕したとき

 これまで、司法巡査が被疑者を逮捕した場合の手続の流れを説明してきました。

 これから、司法警察員が逮捕した場合の手続を説明しますが、司法巡査と司法警察員の逮捕手続の違いは、

引致があるかないか

の違いになります。

 司法巡査が被疑者を逮捕した場合は、被疑者を司法警察員に引致します。

 司法警察員が被疑者を逮捕した場合は、自身が司法警察員なので、あえて司法警察員に引致する手続の必要はありません。

 司法警察員が逮捕した場合の手続は、引致の手続がないことのほかは、司法巡査が逮捕した場合の手続を同じです。

③ 検察事務官が逮捕したとき

 検察事務官が被疑者を逮捕した場合について説明します。

 検察事務官が被疑者を逮捕した場合は、検察官に被疑者を引致します。

 司法巡査が逮捕した場合は、司法警察員に被疑者を引致していましたが、検察事務官が逮捕した場合は、検察官に被疑者を引致するという違いがあります(刑訴法202条)。

 検察官は、検察事務官から被疑者の引致を受けたら、被疑者に対し、

  • 犯罪事実の要旨の告知
  • 弁護人選任権(いつでも弁護人を選任できる権利)の告知
  • 弁解の機会を与える(弁解録取手続)

ことをしなければなりません(刑訴法204条1項憲法34条)。

 検察官は、弁解録取手続の結果、被疑者を留置する必要がないと判断すれば、被疑者を釈放します。 

 反対に、被疑者の留置を継続する必要があると判断すれば、裁判官に対し、勾留請求を行います(刑訴法204条1項)。

 検察官は、弁解録取手続の結果、被疑者を留置する必要がないと判断すれば、被疑者を釈放します。

 反対に、被疑者の留置を継続する必要があると判断すれば、裁判官に被疑者の勾留を請求することになります(刑訴法204条1項)。

検察官が検察事務官から被疑者の引致を受けたあとの勾留請求

 勾留請求には、時間制限があり、検察官が勾留請求をする判断をした場合、被疑者が身体を拘束されてから48時間以内に、裁判官に勾留請求を行わなければなりません(刑訴法204条1項)。

 裁判官は、被疑者を勾留する必要があると判断すれば、勾留状という令状を発布します。

 勾留状が発布されると、被疑者は、10日間、警察署の留置施設に勾留されます。

 さらに必要があれば、勾留期間は10日延長され、被疑者は、最大で20日間、警察署の留置施設に勾留されることになります(刑訴法208条)。

 さらに、被疑者は勾留されたまま事件を起訴されることになると、裁判が終わるまでの間、釈放や保釈をされない限り、ずっと警察署や刑務所の留置施設で身体を拘束され続けることになります(刑訴法60条2項)。

④ 検察官が逮捕したとき

 検察官が逮捕したときは、検察事務官が検察官に対して行う引致の手続はありません。

 それ以外は、検察事務官が逮捕したときと手続内容は同じです。

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