法律(刑法)

詐欺罪(52) ~訴訟詐欺①「訴訟詐欺とは?」「訴訟手続に関する訴訟詐欺の判例」を解説~

訴訟詐欺とは?

 訴訟詐欺とは、

裁判所を欺いて勝訴の判決を得て、敗訴者から財物(財産上の利益)を交付させる詐欺

をいいます。

 詐称詐欺が詐欺罪を構成することについて、旧刑法時代から一貫して肯定されています。

大審院判決(明治28年12月5日)

 この判例で、裁判官は、

  • 訴訟上事実を構造して、裁判官を錯誤に陥らしめ、自己の所有に属せざる物件を騙取せしめんとしたる所為は、詐欺取得罪なりとす

と判示しました。

大審院判決(明治29年12月21日)

 この判例で、裁判官は、

  • 無効に属したる証書を利用し、もって債権を仮装し、裁判所に出訴したる所為は、詐欺の手段なり
  • 而してこれによりて金員騙取の目的を達したる所為は、詐欺取得罪なりとす

と判示しました。

訴訟手続に関する訴訟詐欺の判例

 訴訟手続に関する訴訟詐欺の判例を紹介します。

大審院判決(明治44年11月27日)

 主たる手形債務が支払を受け、消滅したのにかかわらず、その債務の保証のために受け取っていた約束手形を裁判所に提出して支払命令の申請をし、次いで、保証債務請求の本案訴訟を提起した行為は、人を欺くことに当たり、詐欺罪(この判例の事案では詐欺未遂罪)が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 被告人が被害者より金員を騙取せんため、本件約束手形を裁判所に提出して、支払命令の申請をなし、次いで、本件訴訟を提起したる事実なれば、その詐欺未遂の犯罪行為たることは、論を俟たず

旨判示しました。

大審院判決(大正元年12月16日)

 売掛代金支払の請求に対し、すでに無効となった領収証を裁判所に提出し、これに基づき請求代金の一部はすでに支払った旨を抗弁した行為は、人を欺くことに当たり、詐欺罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 売掛代金支払の請求に対し、既に無効に帰したる領収証を裁判所に提出し、これに基づき、債務の弁済を免れんとしたるは、すなわち人を欺罔し財産上不法の利益を得んとしたるものなれば、刑法第246条第2項に該当するものとす

と判示しました。

大審院判決(大正3年5月12日)

 不実の訴えを提起し、口頭弁論で不実の請求を演述した行為は、人を欺くことに当たり、詐欺罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 裁判所を欺罔して差押解除の判決を受けんとしたる判示事実につき、…口頭弁論において、不実なる請求の演述をなせる事実は、詐欺罪における実行行為の一部なれば、その事実の有無が犯罪の成立に消長を来すと否とを問わず

と判示しました。

大審院判決(大正11年7月4日)

 本人からの債権取立委任は解除され、債務者も本人が真の債権者であることを認め、被告人の権利を否認しているのにかかわらず、たまたま債権証書が手中にあったのを利用し、これに基づき債務者を相手に貸金請求の訴訟を提起し、自分が名実ともに債権者であるように装い、その旨の主張をした行為は、人を欺くことに当たり、詐欺罪(この判例の事案では詐欺未遂罪)が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 本人の信託により自己の名をもって消費貸借をなした貸主となりたる者が、直に契約より、その債権を本人に譲渡し、債務者においても、本人が真の債権者なることを認めたる場合に、たまたま債権証書の自己の手にあるを奇貨とし、これを行使して債権者より金銭を取り立てんと企て、訴えを提起したるも、事発覚して目的を遂げざる行為は、詐欺罪の未遂に該当するものとす

と判示しました。

大審院判決(昭和5年8月5日)

 約束手形金額の一部の支払を受けた手形所持人が、その残額取立委任の目的で裏書をしたところ、受任者である被裏書人が手形に一部弁済の記載がなかったのに乗じ、振出人に対し、手形金全額支払請求の訴訟を提起した行為は、人を欺くことに当たり、詐欺罪(この判例の事案では詐欺未遂罪)が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 約束手形金額の一部の支払を受けたる手形所持人が、その残額取立委任の目的をもって、裏書をなしながら、その目的を付記せざりし場合においても、受託者たる被裏書人が手形に一部弁済の記載なきに乗じ、金員騙取のため、払出人に対して、手形金全額支払請求の訴訟を提起し、その目的を遂げざるときは、詐欺未遂罪成立す

と判示しました。

大審院判決(昭和11年2月24日)

 証拠を偽造してこれを使用した行為は、人を欺くことに当たり、詐欺罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 被告人らは、勝訴不確実なる民事訴訟において、虚偽の記入なしたる一見確実なる手形債権を作成し、偽証教唆又は、自ら偽証して裁判所を欺罔し、もって訴訟を有利に導き、確実に勝訴の判決を得、本件家屋を取戻さんとせしめたるものにして、かくのごとく仮令事実上債権の存在ありたりとするも、その証明困難にして、勝訴の見込なき場合において、確実なる証拠を虚構して勝訴の判決を受けしむるは詐欺罪を構成する

と判示しました。

大審院判決(大正4年11月6日)

 偽造の証拠を利用するなどの手段ではなく、ただ虚偽の事実を陳述したり、あるいは真実に反して否認する行為は、人を欺くことに当たり、詐欺罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 一裁判所を欺岡するには、必ずしも証拠方法を用いざるも、訴訟当事者の主張、もしくは抗弁にして、苟も裁判所を欺罔するに足るべきものなれば、欺罔手段となり得ること論を竣たず

と判示しました。

大審院判決(大正9年11月17日)

 裁判所に対して真実に反して債務を否認する行為は、人を欺くことに当たり、詐欺罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 裁判所に対し、真実に反して債務を否認するが如きは、裁判所を欺罔して不法に債務を免れんとする手段なりとす

と判示しました。

大審院判決(大正14年8月4日)

 債権者からの貸金請求訴訟において、情を知らない訴訟代理人をして、裁判所に対し真実に反し、債務と借用証書の成立を否認させる行為は、人を欺くことに当たり、詐欺罪が成立するとしました。

 裁判官は、

  • 被告人は、代理人Kにおいて、Hの正当代理人として売渡登記済証を占有するに乗じ、代理人Kに対し、右証書返還請求の訴訟を提起し、…裁判所を欺罔して右証書を騙取せんとして遂げざりし以上は、被告人は、裁判所を欺罔してKがHの代理人として占有するH所有の財物を騙取せんとして遂げざりしものにして、Hの法益を侵害せしめんとしたるものなること論なきをもって、たとえKにおいて被害者の地位に立たずとするも、被告人の行為は、詐欺未遂罪を構成すること論を竣たず

とする旨判示しました。

大審院判決(大正14年10月8日)

 土地売買において、売渡登記済証は残代金の支払があるまで売主が所有し、その代理人がこれを保管する旨の契約をした場合に、残代金の支払をしないにもかかわらず、代理人に対して証書返還の請求を起こし、裁判所に対し、「売買代金は全部支払い、売渡登記済証は代金完済と同時に交付を受けたが、代埋人の懇請により一時これを同人に貸与したものであるから、その返還を求める」旨の虚偽の事実を主張した行為は、人を欺くことに当たり、詐欺罪が成立するとしました。

次回記事に続く

 この記事は次回記事に続きます。

 次回記事では、

訴訟詐欺に関し、

を紹介します。