法律(刑法)

詐欺罪(83) ~他罪との関係①「放火罪、往来妨害罪、偽証罪、営利誘拐罪と詐欺罪との罪数関係(併合罪か?牽連犯か?)」を判例で解説~

 詐欺罪と多罪(放火罪、往来妨害罪、偽証罪、営利誘拐罪)との罪数関係について、判例を示して説明します。

放火罪と詐欺罪の罪数関係

大審院判決(昭和5年12月12日)

 保険金詐取の目的で放火し、保険金を詐取した場合、放火罪と詐欺罪は、併合罪の関係になります。

 裁判官は、

  • 保険金騙取の目的をもって、住宅に放火してこれを焼燬しながら出火の原因不明なりと偽り、保険金を騙取するは、放火及び詐欺の併合罪なりとす

と判示し、放火罪と詐欺罪とは、手段と結果の関係になく、牽連犯ではなく、併合罪になるとしました。。

大審院判決(昭和9年9月29日)

 保険金詐取の目的で放火を教唆し、被教唆者が放火したのち、保険金を詐取した場合の放火教唆と詐欺は、併合罪の関係になります。

 裁判官は、

  • 原判決が、被告人の放火罪教唆及び詐欺の成立を認め、これを併合罪として処断したるは至当とす

と判示し、放火罪と詐欺教唆罪とは、手段と結果の関係になく、牽連犯ではなく、併合罪になるとしました。

往来妨害罪と詐欺罪の罪数関係

大審院判決(大正12年3月15日)

 船舶を故意に転覆・沈没(覆没)させて保険金を詐取した場合は、船舶覆没(往来妨害罪)と詐欺罪は併合罪になります。

 裁判官は、

  • 保険者を欺罔して保険金を騙取せんと欲する者が、保険に付したる船舶を故意に転覆せしめ、保険者に対しては不可効力によるものの如く装い、虚偽の事実を通告し、これを錯誤に陥れて保険金を受領したる場合において、船舶覆没の行為は詐欺の行為に対し、刑法第54条第1項後段にいわゆる手段たる関係を有せざるものとす

と判示し、船舶覆没(往来妨害罪)と詐欺罪は、手段と結果の関係になく、牽連犯ではなく、併合罪になるとしました。

偽証罪と詐欺罪の罪数関係

大審院判決(大正2年1月24日)

 詐欺訴訟を提起し、その目的を達するため偽証をした場合、偽証罪と詐欺罪は、手段と結果の関係に立ち、併合罪ではなく、牽連犯になります。

 裁判官は、

  • 数人相謀り、財物騙取の目的をもって、虚構の事実に基づき、民事訴訟を提起したる場合に、共謀者の一人がその目的を達するため、偽証をなしたるときは、その行為は、詐欺罪の手段にほかならざるをもって、刑法第54条にいわゆる犯罪の手段たる行為にして、他の罪名に触れるものとす

と判示し、偽証罪と詐欺罪は、牽連犯の関係になるとしました。

大審院判決(大正5年5月29日)

 詐欺訴訟を提起し、他人を教唆して偽証させた場合、偽証教唆罪と詐欺罪(詐欺未遂罪)は、手段と結果の関係に立ち、併合罪ではなく、牽連犯になります。

 裁判官は、

  • 甲及び乙が丙と共謀して、丁より丙に対する賃金請求事件につき、裁判所を欺罔し、丙をして不法の利益を獲得せしむるため、特約付きの借用証書を偽造し、丙の詐称代理人に交付して裁判官に提出せしめ、かつ、これに牽連して、甲は証書の特約文詞及び宛名が申請に成立したるものの如く虚偽の証言をなさんことを乙に教唆し、偽証をなさしめ、裁判所を欺罔したるも、事発覚して詐欺の目的を遂げ得ざりし場合には、その偽証行為と詐欺未遂行為との間に手段結果の関係あるをもって、刑法第54条第1項の規定を適用すべきものとす

と判示し、偽証罪と詐欺未遂罪は、手段と結果の関係に立ち、牽連犯になるとしました。

大審院判決(昭和5年7月11日)

 上記判例に対し、虚偽の債権を主張し、裁判所を欺いて財物を詐取しようとして、訴訟が地方裁判所に係属中、区裁判所における証拠保全手続において、他人を教唆し虚偽の証言をさせたが、本案訴訟において、その証人調書を利用しなかった場合は、同調書は本案の請求による詐欺行為に対して手段の関係を生じないから、偽証教唆罪と詐欺罪は、牽連犯ではなく、併合罪になるとしました。

 裁判官は、

  • 民事訴訟により虚偽の債権を主張して裁判所を欺罔し、他より財物を騙取せんと企図したる者、訴訟の地方裁判所に係属中、区裁判所における当該訴訟の証拠保全手続において、人を教唆し、宣誓の上、虚偽の証言をなさしむるも、本案訴訟において、その証人調書を使用せざるときは、偽証教唆と詐欺行為とは、牽連一罪にあらずして、併合罪なりとす

と判示しました。

営利誘拐罪と詐欺罪の罪数関係

大審院判決(大正14年4月11日)

 営利の目的で人を誘拐し、被誘拐者を利用して第三者を欺いて財物を詐取した場合、営利誘拐罪と詐欺罪は併合罪になります。

 裁判官は、

  • 営利の目的をもって人を誘拐したる者、被誘拐者を利用し、第三者を欺罔して財物を騙取したるときは、営利誘拐の行為と詐欺の行為とは、各独立して一罪を構成するものとす

と判示しました。