強盗罪と逮捕監禁罪との関係
強盗罪(刑法236条)と逮捕監禁罪(刑法220条)との関係について説明します。
逮捕監禁といえる行為であっても、強盗の手段としての暴行・脅迫と認められる程度のものであれば、逮捕監禁行為は、強盗罪に伴う暴行・脅迫行為と認定され、強盗罪とは別罪として逮捕監禁罪は成立しません。
監禁罪について
例えば、居宅に侵入して、家にいた被害者を縛り上げて監禁し、金品を強奪し、短時間のうちに逃走した場合、その監禁行為は、強盗の手段としての暴行と考えられます。
この場合、監禁行為は、強盗罪における暴行として認定され、監禁罪は成立せず、強盗罪のみが成立します。
ただし、被害者が金品の所在を明らかにしないため、その監禁状態を利用した場合のように、被害者の自由の束縛を目的としているような監禁行為の場合には、監禁罪が強盗罪とは別に成立すると考えられます。
そして、その場合、監禁罪と強盗罪は、通常、手段結果の関係がないから、牽連犯ではなく、併合罪となります。
参考となる判例として、以下のものがあります。
東京高裁判決(昭和37年12月26日)
この判例は、
- 強盗のために為された暴行脅迫と、不法監禁のために為された暴行脅迫とが、別個のものである場合、不法監禁罪と強盗罪の両罪が併合罪として成立する
- 不法監禁と強盗罪との間に、手段と結果の関係は認められないので、両罪は牽連犯にはならない
とした事例です。
裁判官は、
- 被告人Tは、ほか3名と共謀の上、S夫妻を監禁し、これに暴行、脅迫を加えて金員を強取しようと企て、S夫妻より金品を強取し、かつ監禁したというのである
- S夫妻に対し、強盗の目的のために暴行脅迫を為したことはもちろんのこと、不法監禁のためにも暴行脅迫の手段を用いたことは、原判決の認定するところである
- 強盗のために為された暴行脅迫と、不法監禁のために為された暴行脅迫とは、全く別個のものと認められないことはないから、不法監禁罪は、強盗罪とは別個の犯罪を構成するものといわなければならない
- 被告人の弁護人は、S夫妻を不法に堅禁したことは、S夫妻より金品を強取するための手段であるから、刑法第54条第1項後段により牽連一罪をもって処断すべきものであると主張するけれども、財物強取の意思をもって、被害者に暴行脅迫を加え、その反抗を抑圧した上、財物を強取すれば強盗罪は成立するものであって、強盗を為すために、あらかじめ、わざわざ不法監禁をすることが強盗に直接かつ必要な手段として普通用いられる行為とも認められない
- よって、本件の不法監禁と強盗とは、全然別個独立の犯罪として成立するものというべく、これをもって牽連犯をもって律すべき場合でもない
と判示しました。
逮捕罪について
逮捕の場合には、強盗目的による逮捕である限り、強盗罪とは別に、逮捕罪が成立する余地はありません。
逮捕後に財物奪取の意思が生じた場合には、強盗罪とは別に逮捕罪が成立すると考えられます。