刑法(公務員職権濫用罪)

公務員職権濫用罪(1)~「公務員職権濫用罪とは?」「保護法益」「主体(犯人)」を説明

 これから10回にわたり、公務員職権濫用罪(刑法193条)を説明します。

公務員職権濫用罪とは?

 公務員職権濫用罪は、刑法193条において、

公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の拘禁刑に処する

と規定されます。

 公務員に与えられている各種の権限は、公務員が国民から負託を受けて、公共の利益に合致するように行使されるべきものです。

 公務員職権濫用罪の制定目的は、公務員が負託の趣旨に背き、公務員に与えられている各種の権限を濫用し、国民に不当な害悪を与える行為を防止することにあります。

保護法益

 公務員職権濫用罪の保護法益は、

第一次的には、公務員の行う職務の公正に対する社会の信頼

であり、

二次的には、公務員の職権濫用行為によってその相手方である個人の自由、権利

です。

主体(犯人)

1⃣ 公務員職権濫用罪の主体は、「公務員」です。

 公務員の範囲については刑法7条1項において、

この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう

と定義されています。

2⃣ 公務員とみなされる「みなし公務員」についても、その職務が公務であるか否かに関わりなく、公務員職権濫用罪の適用に当たって公務員とみなされ、本罪の主体となります。

 みなし公務員とは、「公務員ではないが、公務員とみなされて、公務員に適用される刑法の規定の一部が適用される職員」をいいます。

 具体的には、

  • 日本郵便の職員
  • 日本銀行役職員
  • 国立大学職員
  • 日本年金機構の役職員
  • 電気・ガス・水道・通信など公共インフラに関わる職員
  • 自動車教習所の技能検定員
  • 日本弁護士連合会の会長
  • 公証人

などが該当します。

3⃣ 公務員であっても、公安調査官については、破壊防止法45条において、刑法とは別個に職権濫用罪が規定されており、これによって処罰されることとなるので、公務員職権濫用罪の主体とはなりません。

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