刑事訴訟法(公判)

公判期日外の証拠調べ①~「期日外尋問」を説明

公判期日外の証拠調べ(「期日外尋問」と「裁判所による現場検証」)

 公判において、検察官、弁護人又は被告人が、証拠を裁判官に提出し、裁判官がその証拠を取り調べる手続を「証拠調べ手続」といいます(詳しくは前の記事参照)。

 証拠調べ手続は、直接主義口頭弁論主義公開主義に基づき公判を行う要請から、公判期日(公判が開かれる日)に行うのが原則です

 しかし、例えば、

  1. 証人が病気のため公判期日に裁判所に出頭できず、証人尋問を行えない場合
  2. 裁判所が主導して犯行現場を検証する場合

のように、公判期日に証拠調べを行うことができない場合があります。

 そこで、刑事訴訟法は、公判期日外(公判が開かれる日ではない日)に証拠調べを行うことを認めています。

 ①の場合につき、公判期日外に証人の尋問を行うことを「期日外尋問」といいます。

 ②の場合につき、裁判所による現場検証は全て公判期日外の証拠調べとして行われることになっており、これを「裁判所による現場検証」と呼びます。

 公判期日外における証拠調べ(「期日外尋問」、「裁判所による現場検証」)は、公判期日における証拠調べの準備(これを「公判準備」といいます)として行われるものとして整理されるので、その結果を書面に記載し、その書面を公判期日に改めて取り調べることになります(刑訴法303条)。

 この記事では、「期日外尋問」について説明します(「裁判所による現場検証」は、次回の記事で説明します)。

期日外尋問とは?

 期日外尋問とは、公判期日外(公判の日ではない日)に行われる証人尋問をいいます。

 期日外尋問には、

  1. 裁判所外で行われる場合(刑訴法158条
  2. 裁判所内で行われる場合(刑訴法281条

の2つがあります。

 ①の裁判所外で行われる期日外尋問は、「出張尋問」とも呼ばれ、例えば、

  • 病気中の証人を入院先の病院で尋問する場合(これを「臨床尋問」といいます)
  • 目撃証人を事件現場に召喚して、その場で尋問する場合

が挙げられます。

 ②の裁判所内で行われる期日外尋問は、例えば、

  • 公判期日には証人が海外出張のため日本にいないなど、指定された公判期日に証人を尋問することができない事情がある場合

が挙げられます。

 このような場合に、公判期日外に、証人を裁判所に呼ひ出して尋問することが行われます。

期日外尋問を行うのは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、必要と認める時に限られる

 期日外尋問は、公判期日に証拠調べを行うという原則に対する例外的なものです。

 なので、期日外尋問を行う場合は、証人の重要性、年齢、職業、健康状態その他の事情と事案の軽重を考慮した上、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、必要と認める時に限られます(刑訴法281条158条1項)。

期日外尋問を行うことができる裁判官

 期日外尋問を

裁判所外

で行う場合は、公判を主催する裁判所の裁判官が尋問を行うほか、

証人の現在地の地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所の裁判官に尋問を委託して行わせる

ことができます(刑訴法163条)。

 ただし、

裁判所内

での尋問の場合は、公判を主催する裁判所の裁判官が自ら尋問を行う必要があり、他の裁判所の裁判官に尋問を委託して行わせることは違法となります(最高裁判決 昭和29年9月24日)。

検察官、被告人、弁護人の期日外尋問の立会

 検察官、被告人又は弁護人は、期日外尋問に立ち会う権利があります(刑訴法157条)。

 なので、期日外尋問の日時・場所は、あらかじめ立会権者であり尋問権者でもある検察官、被告人及ひ弁護人に告知しなければなりません(刑訴法157条2項本文)。

 ただし、検察官、被告人又は弁護人が、あらかじめ裁判所に尋問に立ち会わない意思を表明したときは、期日外尋問の日時場所を告知する必要はありません(刑訴法157条2項ただし書)。

検察官、 被告人及び弁護人が期日外尋問に立ち会わなかった場合

 期日外尋問の場合は、公判期日の証人尋問と異なり、検察官、被告人及び弁護人が立ち会わなくても行うことができます。

 裁判所は、検察官、被告人又は弁護人が、期日外尋問に立ち会わなかったときは、立ち会わなかった者に対し、尋問した証人等の供述内容を知る機会を与えなければなりません(刑訴法159条1項)。

尋問事項書の提出、尋問事項の告知

① 検察官、被告人又は弁護人の請求により期日外尋問を行う場合

 検察官、被告人又は弁護人の請求により期日外尋問を行う場合、尋問を請求した者は速やかに、証人の証言により立証しようとする事項の全てにわたった

尋問事項書(尋問事項又は証人が証言すべき事項を記載した書面)

を裁判官に提出しなければなりません(刑訴法規則106条1項・3項・4項)。

 裁判所は、尋問事項書を参考として尋問すべき事項を定め、検察官、被告人又は弁護人に知らせなければなりません(刑訴法158条2項刑訴法規則108条1項)。

② 裁判所が職権で期日外尋問を行う場合

 検察官、被告人又は弁護人の請求によらず、裁判所が職権で期日外尋問を行う場合には、あらかじめ検察官、被告人及び弁護人に尋問事項を知らせなければなりません(刑訴法158条2項刑訴法規則109条1項)。

必要な事項の尋問の請求

 ①と②のどちらの場合でも、尋問事項の告知を受けた者は、告知を受けた尋問事項に加えて、必要な事項の尋問を請求することができます(刑訴法158条3項刑訴法規則108条2項・109条2項)。

期日外尋問中に被告人を退席させることができる

 被告人が期日外尋問に立ち会った場合に、

証人が被告人の面前では圧迫を受けて充分な供述をすることができないと認められるとき

は、裁判所は、通常の公判期日に行われる証人尋問の場合と同様、弁護人が立ち会っている場合に限り、検察官及び弁護人の意見を聴き、

証人の供述中、被告人を退席させる

ことができます(刑訴法281条の2)。

(なお、通常の公判期日に行われる証人尋問で被告人を退廷させることができることの説明については前の記事参照)

証人尋問調書の作成

 期日外尋問が終わると、証人尋問調書が作成されます(刑訴法規則38条、42条、52条の2)。

 作成された証人尋問調書は、公判の日に、証拠書類として裁判官の職権で取調べが行われ、問題がなければ、証拠として採用されます刑訴法303条)。

 期日外尋問の証人尋問調書は、刑訴法321条2項前段により証拠能力(証拠として採用できる資格)が認められます。

次回の記事に続く

 次回の記事では、公判期日外の証拠調べのうちの、

裁判所による現場検証

を説明します。

刑事訴訟法(公判)の記事まとめ一覧