刑法(横領罪)

横領罪(42) ~横領行為の類型③「贈与・交換による横領罪」を判例で解説~

 横領行為の類型は、

①売却、②二重売買(二重譲渡)、③贈与・交換、④担保供用、⑤債務の弁済への充当、⑥貸与、⑦会社財産の支出、⑧交換、⑨預金、預金の引出し・振替、⑩小切手の振出し・換金、⑪費消、⑫拐帯、⑬抑留、⑭着服、⑮搬出・帯出、⑯隠匿・毀棄、⑰共有物の占有者による独占

に分類できます。

 今回は、「③贈与・交換」について説明します。

贈与・交換による横領罪

贈与による横領罪

 委託の趣旨に反して、不法領得の意思をもって、委託物を他人に贈与することは横領行為に当たります。

 贈与による横領罪の参考となる判例として、以下のものがあります。

東京高裁判決(昭和39年4月8日)

 この判例で、裁判官は、

  • 会社の自社株式を保管する代表取締役社長が、自己及び幹部役職員に対し、自らが保管する会社の自社株を配分贈与する旨の意思表示をすると同時に、各配分取得者との明示又は黙示の合意によりその者のために株式を占有するに至ったときに横領罪が成立し、株式の保管状況の外見的変更を伴う処分行為が行われる必要はない

と判示し、贈与による横領罪は、贈与の意思表示があった時点で成立するとしました。

交換による横領罪

 権限なくして、委託物を他の物と交換することも横領行為に当たります。

 交換による横領罪の参考となる判例として、以下のものがあります。

大審院判決(明治43年9月27日)

 この判例は、特定物として寄託された10円紙幣1枚を、5円紙幣1枚と取り換えた場合には、10円紙幣1枚を横領したことになるとしました。

最高裁判決(昭和26年5月31日)

 この判例は、食料営団出張所長として保管していた小麦を、権限なく、醤油及び現金と交換して譲渡することは横領となるとしました。

 裁判官は、

  • 横領罪の成立に必要な不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思をいうのであって、必ずしも占有者が自己の利益取得を意図することを必要とするものではない
  • 被告人は、A営団B出張所長として、その業務上保管していた同営団所有の小麦250袋100キログラム入りを、何らの権限なく、ほしいままに、C株式会社常務取締役Dに対して、醤油40現金8000円と交換譲渡したというのである
  • されば、業務上横領罪の判示として欠くるところはない

と判示しました。

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横領行為の類型の記事まとめ

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