刑法(横領罪)

横領罪(49) ~横領行為の類型⑩「消費による横領罪」「拐帯による横領罪」を判例で解説~

 横領行為の類型は、

①売却、②二重売買(二重譲渡)、③贈与・交換、④担保供用、⑤債務の弁済への充当、⑥貸与、⑦会社財産の支出、⑧交付、⑨預金、預金の引出し・振替、⑩小切手の振出し・換金、⑪費消、⑫拐帯、⑬抑留、⑭着服、⑮搬出・帯出、⑯隠匿・毀棄、⑰共有物の占有者による独占

に分類できます。

 今回は、「⑪費消」「⑫拐帯」について説明します。

消費による横領罪

 金品を使い果たすような事実上の処分としての「費消」は、横領罪においても典型的な実行行為の手段です。

 たとえば、友人から預かっている金を、勝手にパチンコで使った場合は横領罪となります。

拐帯による横領罪

 拐帯(かいたい)は、「持ち逃げ」のことをいいます。

 拐帯の判例上の定義は、

他人の物の保管者が、不法領得の意思のもとに、その物をほしいままに持ち去り、もって他人の権利を排除し、その物を自己の所有物のごとくに支配し又は処分し得る状態におく行為

となります(東京高裁判決 昭和34年3月16日)。

 拐帯行為は、売却、貸与費消等の前段階のものですが、不法領得の意思を実現する行為と認められる限り、拐帯行為をした段階で、横領罪が成立します。

 この点について、前掲の判例が参考判例となります。

東京高裁判決(昭和34年3月16日)

 この判例は、勤め先で銀行への預金を任せられ現金等を預かりバイクで銀行に向かう途中、遊興費等に充てようと思いそのまま逃走すれば横領となるとしました。

次の記事

横領行為の類型の記事まとめ

横領罪(40) ~横領行為の類型①「横領行為としての『売却』」「仮装売買による横領罪の成否」「売却の意思表示をした時に横領罪は成立する」「不動産の売却に関する横領罪の成立時期」を判例で解説~

横領罪(41) ~横領行為の類型②「二重売買(二重譲渡)による横領罪」を判例で解説~

横領罪(42) ~横領行為の類型③「贈与・交換による横領罪」を判例で解説~

横領罪(43) ~横領行為の類型④「担保供用による横領罪」「質権・抵当権・譲渡担保権の設定による横領」を判例で解説~

横領罪(44) ~横領行為の類型⑤「債務の弁済への充当による横領罪」「貸与による横領罪」を判例で解説~

横領罪(45) ~横領行為の類型⑥「会社財産の支出による横領罪」を判例で解説~

横領罪(46) ~横領行為の類型⑦「交付による横領罪」を判例で解説~

横領罪(47) ~横領行為の類型⑧「委託金の預金、預金の引出し・振替による横領罪」を判例で解説~

横領罪(48) ~横領行為の類型⑨「小切手の振出し・換金による横領罪」を判例で解説~

横領罪(49) ~横領行為の類型⑩「消費による横領罪」「拐帯による横領罪」を判例で解説~

横領罪(50) ~横領行為の類型⑪「抑留による横領罪」「虚偽の事実を述べることで抑留行為となり、横領罪が成立する」「不作為による抑留」を判例で解説~

横領罪(51) ~横領行為の類型⑫「着服による横領罪」「搬出・帯出による横領罪」を判例で解説~

横領罪(52) ~横領行為の類型⑬「隠匿・毀棄による横領罪」「共有物の占有者による独占による横領罪」を判例で解説~

横領罪(1)~(65)の記事まとめ一覧

 横領罪(1)~(65)の記事まとめ一覧