刑法(横領罪)

横領罪(44) ~横領行為の類型⑤「債務の弁済への充当による横領罪」「貸与による横領罪」を判例で解説~

 横領行為の類型は、

①売却、②二重売買(二重譲渡)、③贈与・交換、④担保供用、⑤債務の弁済への充当、⑥貸与、⑦会社財産の支出、⑧交換、⑨預金、預金の引出し・振替、⑩小切手の振出し・換金、⑪費消、⑫拐帯、⑬抑留、⑭着服、⑮搬出・帯出、⑯隠匿・毀棄、⑰共有物の占有者による独占

に分類できます。

 今回は、「⑤債務弁済への充当」「⑥貸与」について説明します。

債務の弁済への充当による横領罪

 金銭等の委託物を、自己の債務の弁済に充当することは横領罪に当たります。

 参考となる判例として、次のものがあります。

最高裁決定(昭和32年12月19日)

 個人商店の経営者が、株式会社を設立するために出資された資金等によって工場を建設し、創立総会が開かれ、出資者らも定款発起人として署名捺印して、公証人の認証を受けるなどした上で、株式会社の商号を用いて事業が行われていたが、株式会社の設立に至らないまま当該工場を自己の私的債務弁済のため売却した事案で、裁判官は、

  • 商法上の匿名組合商法536条1項により匿名組合員の出資は営業者の財産に属するとされる)ではなく、民法上の組合関係(民法668条により組合財産は組合員の共有に属するとされる)を認めるべきである

として、共有財産である工場を自己の私的債務の弁済のために売却した行為は横領罪に当たるとしました。

東京高検判決(昭和59年11月6日)

 この判例は、手形取立てを依頼され、自己名義の銀行預金口座に振り込まれた手形金を、 自己がその銀行に対して有する債務の弁済に充当した場合には横領となるとしました。

 裁判官は、

  • 手形債権の取立てを委託された者が取り立てた金銭は、直ちに委託者たる手形債権者の所有に帰属する
  • 決済された手形金が、受託者の預金口座に振込入金された場合は、受託者において、受託者の預金口座中に、その手形金相当の金額を委託者のため預かり保管しているものと認められる
  • よって、手形債権の取立てを委託された者が、自己の管理する口座に振り込まれた手形金相当の金額を自己の債務返済のために払い戻すことは横領に当たる

としました。

貸与による横領罪

 委託物を委託の趣旨に反して他人に貸与するときは、横領罪が成立します。

 この時の貸与の種類は、賃貸借消費貸借使用貸借にいずれであるかにかかわりません。

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横領行為の類型の記事まとめ

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横領罪(44) ~横領行為の類型⑤「債務の弁済への充当による横領罪」「貸与による横領罪」を判例で解説~

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